何故穴が明いてるの?


磐笛には決まった形というものはありません。
岩石の種類も様々ですが、「自然の穴ありて、吹けばなるもの」であり、種々の要因で穴があいたものです。

貝による穴

生きた貝が穴を空けるというケースがあります。
これはボーリングシェル(穿孔貝せんこうがい)と呼ばれる貝が、柔らかい砂岩や泥岩を削ったり、あるいは酸で石を溶かして穴を明けたものです。
石に穴を開ける貝としてはタガソデガイモドキ、トマヤガイ、カモメガイ、モモガイ、キナマツカゼガイ、イシマテガイヤエウ、メノハナガイ等があり、貝の大きさやによって穴の径や、角度が変わってきます。
一般的な磐笛の多くはこの貝由来のタイプをいい、酸に溶けやすい石灰岩や泥岩や砂岩の場合が多く、深い穴が特徴です。
穴の深いほど奥行きのある音が出て、音も大きいが、穴の径が大きすぎても音が出しにくい。

                          
穿孔貝が石灰岩に穴をあけたもの、石灰岩が一番あけやすいので石灰岩質の浜辺では比較的多く見つかります。

堆積岩

堆積岩(たいせきがん)は、既存の岩石が風化・侵食されてできた礫・砂・泥、また火山灰や生物遺骸などの粒子(堆積物)が、海底・湖底などの水底または地表に堆積し、続成作用を受けてできた岩石ですが、堆積の過程で巻貝等を巻き込みます。これ等カルシュウム含有の堆積岩が自然の侵食作用で小石となり、貝のカルシュウムが酸によって溶け穴が空きます。

                         

火成岩による気泡

火成岩は大きく分けて、火山岩(マグマが急激に冷えて固まったもの)と深成岩(マグマがゆっくり冷えて固まったもの)の2つに分類されます。
火山岩と深成岩の分類において重要なのは冷え固まったスピードで、どこで固まったかは分類に関係ありませんが、急速に固まった火山岩には気泡がそのまま残存して固まったものがあり、これに息を吹き込むと音がでます。
一般的には浅い穴が多く、店主の愛用しているサヌカイト製磐笛もこのタイプ。
特にサヌカイトの場合は、硬度が水晶より硬い為、非常に透明感のある高音が特徴です。
サヌカイトを含む安山岩には、特にこの手の気泡が多い。

                     
             伊豆大島産の玄武岩の気泡     サヌカイト(高マグネシア安山岩)の気泡

変成作用による穴

変成岩(へんせいがん)とは、既存の岩石が変成作用を受けた岩石のこと。
変成岩の原岩は火成岩、堆積岩など種類は問わず、変成岩がさらに変成作用を受ける場合もあります。
この変成の過程で、種類の違うタイプの岩石や異物が混入し、浸食作用を受け小石状になる過程で剥離したものの内、穴状になるものがあります。
様々なタイプがありますが、孔の浅い物や、内側が複雑な形状のものがおおく、雑味のある音が出ます。

                          
                   伊勢神宮などで使用される御白石(三波川帯石英片岩)

その他の要因

石の形状は実に千差万別です、中にはどうしてこんな穴が出来たのか判らないものもあります。
しかし「自然の穴ありて、吹けばなるもの」であれば全て磐笛ということになります。

                       
           四国カルストで採集した石灰岩石笛     番外編ですがメノウの原石をカットした石笛
          (雨水で侵食された穴が貫通している)    (結晶した中央部分に隙間があって音が出ます)

概ね小さい穴の場合は音が出にくいのが多く、磐笛としては不向きです。
店主の経験では、穴の径が6mm〜15mm、奥行きが10mm以上あると、たいがい音が鳴ります。(もちろんそれ以下でも鳴るものは鳴ります)
磐笛として使用するからには、何時何処で吹いても音が鳴る磐笛が必要です。



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