磐笛とは


磐笛・岩笛・石笛 (読み方:いわぶえ・いしぶえ)

石でできた笛の事で、今から約五千年前の縄文時代中期頃の遺跡からも発見されています。

鳥取県の目久美遺跡や三内丸山遺跡から発掘された縄文前期の磐笛、千葉県の曽谷貝塚からは翡翠製の磐笛(縄文中期・國學院蔵)、東京国分寺で見つかった同じく翡翠の磐笛(縄文中期)、石川県真脇遺跡、北海道日高地方、函館・谷地頭遺跡、岐阜県東乙原遺跡(いずれも縄文中期)等々、各地から発見されています。
最近では縄文時代前期の轟貝塚(熊本県宇土市)で、人工穿孔された笛が出土しました。












形状的には人工的に穿孔されたもの、自然の穴のもの、自然の穴に加工を施したものなど、様々な形と材質のものが見つかっています。

日本では、現在の神道の原型となる原始シャーマニズムの時代から、磐座を中心にした岩石祭祀の形態が見受けられ、現在に至るまで、その系譜は連綿と続いています。
いつ何故そうなったのかは、現在の文字が使用されるはるか以前のことであり、詳細な記録が残存していない為謎ですが、何故かしら岩石を中心として祭祀が行なわれていました。
縄文のあとの弥生期にも磐笛は存在していたはずですが、この時代の出土品の中には、ほとんど見うけられません。
縄文時代に使われていた磐笛の音は、いわゆる神おろし(鎮魂)に使われていたものといわれています。
自然そのものを神として敬ってきた日本では、古くから「自然には不思議な力が宿る」と考えられており、神道では磐笛の奏でる調べには、音霊が宿るとされてきました。
現在の神道で使用される龍笛や能狂言に使われる能管(横笛の一種)の音は、石笛に似せて作られたのではないかといわれています。
天然の自然石を使用するため、ほぼ当時のままの形態で受け継がれていますが、現在ではごく一部の神社や音楽家、古神道愛好家によってのみ演奏されているマニアックな世界です。

江戸時代後期には国学者の平田篤胤(ひらた あつたね)、幕末・明治の神道学者・本田親徳(ほんだ ちかあつ)等が「鎮魂帰神法」を用いて磐笛使用法の伝承事例を再興させました。
「音霊」の霊力を借りて神霊を呼び迎える儀式に使用されたのが磐笛で、本田親徳によって『鎮魂帰神の作法に必要な用具たるべし』と示されています。
鎮魂帰神法は一種の降霊術とも言えるもので、秘教的な意味合いが強いものですが、現在ではその危険性から一部の神道系流派が行っているのみのようです。  
 


                          

                           平田篤胤               本田親徳

  鎮魂帰神法

    @侍座者が石笛を吹いて神主(憑代)をトランス状態に導き、神霊を呼び迎えて神主に憑依させ

    A審神者(さにわ)が神の正邪を見極め

    B神主を介して神の託宣を受ける

さる演奏家が天河弁才天社で磐笛を授かった際、二つの決まり事を伝授されたそうで、一つは全くの天然石であること、もう一つはみだりに試し吹きをしてはならない、ということだそうです。
現在では天然石を人工的に穿孔した磐笛も販売されていますが、天然物の場合穴の形状は千差万別様々です。
その為音を出すのは少々難しくなりますが、またそこが天然磐笛の面白さでもあります。(まあこの辺はお好みですけれど、、、)
磐笛には自然と遊離した現代人に原始の感覚を喚起させる何かがあるようですが、
ヤポネシ屋亭主の10数年来にわたる磐笛研究を通して、特殊な宗教的使用方以外にも、楽器としての面白さ、腹式呼吸による奏法や、磐笛の音によるリラックス効果等があることを体験しました。
前述したように岩石祭祀の形態は、現在では日本のみにかろうじて残されている原始シャーマニズムの系譜をひくものです。
しかしストーンヘンジのあるイギリスなどでは、巨石の前で家族ピクニックを楽しんだりと、ぐっとリラックスした感じで石と接しているようです。
岩石自体は自然作用で出来たものなので、本来は特定個人の所有物ではなくパブリックなものです。
店主の場合小さい頃磐座の上で遊んでいた体験上、磐座や磐笛をもっと身近なものとして楽しんでも良いのではないかなあと思っています。
(もちろん、宗教的儀式に使用されていた、あるいは現在進行形のものですから、それなりのリスペクトが必要ですけれど)

           
                 三重県南牟婁郡 日輪様              イギリス  ストーンヘンジ

また磐笛を吹く場合は、あまり特定の御神名といった具体的イメージを持たれるよりも、普段呼吸するように出来るだけさりげなく楽しんで吹かれることをお勧めしてします。
店主の経験では、イメージが先行してしまうと、逆に磐笛や演奏者の本来持つ能力が限定され、結果的に笛の音色も幅の狭いものとなるような気がします。

自然に穴の開いたものなので、出来れば御自身で採集されるのがベストですが、天然物だけになかなか手に入れることがむずかしいものです。
やみくもに海岸や河原を探してもそうそうあるものではありませんし、思考の介在する人間には、穴の開いた石を何時間も探すという行為の持続は困難です。
かなり慣れた亭主でも、一日中探しても納得のいくものが1個あるかないかくらいの時もありますので、ただの石とはいいながらやはり希少価値のあるものです。

ヤポネシ屋の磐笛      

ギャラリーにある磐笛達は、亭主が自らの足で、10数年間かけてコレクションしたものです。
また、全く自然の石が原則ではありますが、光沢が欲しいというリクエストにお答えして、表面磨き仕様の磐笛も用意させていただきました。
天然磐笛の命である穴周りは掃除だけに止め、石の表面だけをブラッシングしました。
ブラッシングは表面の汚れを落とすくらいの微妙なラインを見極め、一つ一つ目視確認しながら作業しており、石自体を削ることはありません。
汚れを取去ることにより模様が浮かび上がってくる作業は楽しいもので、岩質にもよりますが石本来の輝きが甦ります。
当たり前の事ですが、当店の磐笛は全て必ず音が鳴ります、どうぞ奥深い貴方だけの磐笛の世界をご堪能下さい。

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