吹き方について


最初に

磐笛(岩笛、石笛)の音色はイメージ的に縦の音と呼ばれます。
ピーという高音を発し、日本刀の様な切れのある音で、これが天と地をつなぐもの、あるいは神おろしの音とされる由縁です。
逆に法螺貝などは横の音というイメージがあり、古くは出航の合図やセレモニーに使用され、山岳神道においては山中で吹かれています。
法螺貝の先端部を切り飛ばしただけでも音がなりますが、口金をつけて音階を吹き分けることが出来ます。
また尺八の場合は演奏用に製作されているので、管楽器独特の低音から高音までを吹き分けることが出来ます。
天然磐笛(岩笛、石笛)の場合基本は一音で完結している世界なので、技巧に走らず一音一音、一息一息を大事に吹くのが良ろしいかと思います。

初級 吹き方

吹き方は千差万別です。
要は御自身の納得のゆく音が出れば良いわけですが、使用される磐笛(岩笛、石笛)の形状にもよりますし、またモデルとされる先達の奏法にも強く影響され、決まったスタイルというものはありません、またそこが天然物磐笛(岩笛、石笛)の面白さでもあるわけです。
大本系の流派では横吹きが主流とされているようですが、特に様式にこだわる必要は無いかと思います。
店主の場合、穴のラインに垂直に唇を当て、穴を中心にして石笛を5〜50度の間くらいで前後方向に回転させた位置で吹いています。(半横吹きスタイルです)
あくまで目安です、穴の形状や深さによって異なりますし、上下、斜め方向になる場合もあります。
ある程度磐笛(岩笛、石笛)が馴染んでくると、逆に唇が勝手に角度をつけるようになります。
コツとしては、唇の形状を出来るだけ丸く細くつくり、息のセンターが穴の中心に向かうようなイメージで吹き、そこから石笛に角度をつけながら音を探っていくような感じです。(色々な角度から微調整してみてください)
唇の形状は丸箸を唇で軽く挟み、そのまますっと箸を抜いた状態です。(店主の場合は軽く柔らかくという感じを大事にしています)

鳴る仕組み

店主の吹き方の場合、穴に入れた息が抵抗体に当って音が出ますので(貫通型も穴を塞いで吹くので原理は一緒)、ポイントは息を出来るだけ効率よく抵抗体に当てることです。
あえて抵抗体と表現しているのは、抵抗体=エッジとは限らないからです。
穿孔貝由来の磐笛(岩笛、石笛)の場合ほとんどはエッジが抵抗体となって音を出すのですが(もちろん例外も多々あります)、その他の要因(例えば火成岩で気泡を持つ場合等)は穴内部の鋭突起物が抵抗体になることもあります。
この抵抗体の見極めは音の質に深く関わってきますが、天然磐笛(岩笛、石笛)の場合は抵抗体の場所は石次第です。(石によっては何パターンも音が出ます)
音が出そうな抵抗体に狙いを定め息を吹き込みますが、あまり深く考えず瞬間的に判断した方が良い結果が出ます(音が出なければ次の角度からトライしましょう)。
吹き込んだ息が抵抗体に触れて音を出し、空洞部分で増幅された音が外に出るというのがひとつの理想的な形です。
この音発生プロセスでは、石質、抵抗体の形状と穴の深さ(共鳴能力)が音質と音量を決定します。
穴の入り口の形状が複雑な場合は、唇でいびつな部分を密着させて息漏れをふさぎながら吹きます。
また形状によっては少し唇を浮かせ気味に吹いたりする場合もありますが、この辺の加減はある程度吹き込んでみないとわからないかもしれません。
この様に音の出し方は、石の形状によって相当なバリエーションがありますので、理論ではなく基本は石に合わせて吹いて下さい。(鳴る吹き方が御自身に合った奏法です)

出来るだけ普通に吹く

最初はたよりないように思われるかもしれませんが、ごく普通の息で吹くのがお勧めです。
普段呼吸をするときに顔を真っ赤にして呼吸する人は居ません、また意識して呼吸しようとすると息苦しくなります。
それは自然な呼吸では無くなるからです、不自然な息で磐笛(岩笛、石笛)を吹いても長続きしませんし、側で聴いていても美しくありません。
弱い息で鳴るポイントが一番効率良く安定した音が出るポイントです。

息を当てるポイントと穴の容量と息のバランスが重要で、磐笛(岩笛、石笛)によって夫々違いますので、音が出るまで吹く位置をグルグル回しながら、色々な角度や息の入れ方で試してみてください。
風に吹かれてヒュ〜とかすかに音が出るか出ないかくらいの弱々しい音が鳴りかけたら、その位置でもうしばらく音を探ってみてください、息は吹き過ぎないように注意しましょう。
段々息が良い位置に当たって、音がクリアーになってくればしめたものです。
とりあえずそこを基準に更に吹き込んで、正確なポイントをつかみましょう。(磐笛(岩笛、石笛)は三次元で音が鳴りますので、面だけではなく息の強弱も重要なファクターとなります)
磐笛(岩笛、石笛)は同じ様に吹いても人それぞれに音が異なります、得意なポイントをつかんで世界に一つしかないオリジナルな磐笛(岩笛、石笛)の世界をお楽しみ下さい。


中級コース 吹け吹くな


禅の公案のようですが、ちゃんと訳があって、この言葉が全てを表現しています。
シンプルな楽器だけに、息の状態(精神状態)がそのまま音色に現れます、うまく吹こうと意識したとたんに息が乱れ、鳴らなくなるので強く吹いてしまうと、更に鳴らなくなります。(笑)
追越し禁止、音を出すには必要最小限の息で十分です。
普通に息を吐くくらいで吹き始め、音が出始めたら強さではなく、深く長い静かな呼吸を心がけてください。
しばらく吹きこんでポイントが定まったら、今度は更に力を抜いて、息の出す位置を臍下丹田(ヘソ下三寸の位置)まで下げてみましょう。(強さではありません、深さです)
丹田から息が通うようになると、音も深く安定してきて吹いていても気持が良いです。(あまり丹田を意識し過ぎて腹筋が緊張すると、息が苦しくなるので注意しましょう、緊張ではありません、リラックスした状態でほんの少し丹田に意識を向けるだけで十分です)
吹き手がリラックスして気持ち良く吹いている状態が、当然側で聴いていても気持ち良い音です。

上級コースその一 ジンギスカンスタイル

磐座や滝などで磐笛(岩笛、石笛)奉納する場合、山の上だったりするのでよく磐笛(岩笛、石笛)を持っていくのを忘れたりする事がありますが、そんな時は近くの石をよ〜く見てみましょう、お手頃な穴があいている場合があります。
こんな時は現地調達のジンギスカンスタイルで磐笛(岩笛、石笛)奉納すると、今までと全く違う感覚になったりします。
巨大露出岩盤などは、当然手には持てませんので、逆に石にへばりつく様な感じで吹いてください。

伊方原発 立神岩

石上布都魂神社 磐座


上級コースその二 胴鳴り

ここから先は店主も数度しか経験が無いのでうまくは書けませんがざっとこんな感じです。
呼吸が深くなった状態でまだ吹けそうな感覚がある時(無理に吹くのではありません)、ゆっくりと吹きながら、磐笛(岩笛、石笛)を持つ手、肩、横隔膜等、全身の余分な緊張が取れリラックスしてくると(脱力ではありません)、息がそのまま石笛に伝わり、磐笛(岩笛、石笛)も浮いたような状態で共鳴するので、磐笛(岩笛、石笛)全体が鳴っているような感じになります。
この状態では磐笛(岩笛、石笛)と吹き手との境が希薄になり、一体化した様な感覚になります。
ただこれは吹いていて自然に起こる状態なので、意識して行なおうとすると、その意識そのものが障害となって逆効果です。

石笛奏法の詳細

岩笛奏者 守山 鷲声さんのHPに石笛奏法の詳細が説明されています。
縦吹き奏法が図解入りでわかりやすく書かれていて、現在ネット上では一番のクオリティです、じっくりご覧下さい。(全編読むと結構時間がかかりますよ〜)

音色

穴の形状、奏法によって太い音から高音まで様々です。
磐笛(岩笛、石笛)には人間の耳には聞こえない高周波の音(高次倍音)が含まれていて、これがリラックス効果を生むといわれていますが、人間よりは動物の方ががよく反応し、磐座のある山中で吹くと野鳥が呼応したり、集まってくることがよくあります。
店主も鳥が寄りすぎて恐怖を覚えたことがあります。(笑)

その他音階をどうしても出したい方は尺八のメリ、カリ、甲(カン)、乙(オツ)の要領で磐笛(岩笛、石笛)に角度をつけたり、唇を閉めたりすればオクターブ前後は吹き分けられます。
店主の知人のミュージシャンもこの奏法で曲を演奏していますが、これも特殊な例だと思いますので、プライベートに嗜む場合は一音を楽しむ事をお勧めします。

大本教の出口王仁三郎が「磐笛(岩笛、石笛)」の音色について、
「むやみにピューピュー吹くのは良くない」
「ユーユーと長く跡の音を引いて、幽と云う音色を発生させるのが第一等」
と記述を残しています(本教創生期)。

磐笛(岩笛、石笛)の音色は、何故か石の硬度が影響します。
軟らかいとソフトな音になり、石が硬いほど硬質な音になります。
店主の経験ではサヌカイト、翡翠、緑泥片岩(三波川帯)、泥岩、安山岩(穴の形状によりますが、意外とやわらかい時もあります)、石灰岩⇔砂岩という順に音が柔らかくなるように思います。(多分生成密度が関係するのではないかと思いますが、あくまでも傾向なので、穴の形状や奏法で音色は随分と変わります)
抵抗体の形状や異物によって、かなり複雑な音色になることがありますが、これは他の人工楽器では絶対に出せないナチュラルな音です。
抵抗体に当てる方向で音色や音域が変ります、鋭角な方向から息を当てるとシャープな音色に、 角の丸い方向から息を当てるとソフトな音色になります。
穴が貫通しているものや、2つの穴がくっついたものは、指で穴を開け閉めしながら吹くことでさらに音の変化をつけることが出来ます。

価格

磐笛(岩笛、石笛)の形は穴の成立要因や岩質によって千差万別で、形のいい磐笛(岩笛、石笛)がいい磐笛(岩笛、石笛)とは限りません。
変な形の石や穴だらけでも、恐ろしく音色のいい石笛があったりします。
形のいい石に穴が明いている確立は極めて低く、見た目のいい磐笛(岩笛、石笛)はやはり希少価値がありますが、外観=音色というわけではありません。
ヤポネシ屋で取り扱う磐笛(岩笛、石笛)の価格は、磐笛(岩笛、石笛)のの恐ろしく多様なバリエーションを、あくまでも店主が経験した範囲内で勘案したのもなので、絶対的価値観ではありません。
磐笛(岩笛、石笛)である以上最も重要な基準は良い音がするかしないかですが、音に関しては吹き手のスキルに依存するところが大きいので、あくまでも潜在的な石の能力ということで価格を提示させていただきました。(ポイントをつかめれば必ず良い音がします)
しつこいようですが磐笛(岩笛、石笛)の世界は決まった形というものはありません、個々のユニークさがそのまま音に現われ、吹き手の音となります。

取扱いについて

磐笛(岩笛、石笛)は神具として使用する場合もありますが、その場合は信頼できる専門家の方の御指導を仰いで下さい。
ただし古神道系の世界は玉石混合状態なので、リスクは付き物であることに留意しておいて下さいね。
解りやすい基準としては、あまり高額な場合は避ける事をお勧めいたします。(霊性はお金の世界とは何ら関係有りません 笑)

個人の趣味の範囲でアプローチする分には、必要以上に神経質になることはないと思います。
もちろん大事に扱うのは基本ですが、吹き込んでいくうちに分身のようになりますので、自ずと大切に扱うようになると思います。
店主は小型のものをリュックに入れていつも持ち歩いており、車や船にも常備していつでも吹けるような体制を作っています。


吹奏例

いたるところで吹いてますのでその中の、一例をご紹介します。


2005.10.2 港柱神社奉納演奏(上から2枚目の写真)

2005.10.16 天岩戸開元祭 立岩神社奉納演奏(上から2枚目の写真)

2005.6.26  忌部神社磐座(黒岩さん)忌部サミット協賛奉納演奏 



磐笛(岩笛、石笛)講習会&個人レッスンのご案内

初体験の方でも、吹奏楽器の経験が無くても、3時間で必ず吹ける様になります!

磐笛(岩笛、石笛)講習会要綱

3名から受け付けています。
磐笛(岩笛、石笛)をお持ちで無い方には、練習用の磐笛(岩笛、石笛)を用意させていただきます。
講習料はお一人様3000円です。
県外への出張は別途交通費が必要となります。(出来るだけ安価な交通手段を考えます)


個人レッスン

マンツーマンで密度の濃い個人レッスンです、通常は1時間ほどでそこそこの音が出るようになります。
磐笛(岩笛、石笛)をお持ちで無い方には、練習用の磐笛(岩笛、石笛)を用意させていただきます。
講習料はお一人様5000円です。
県外への出張は別途交通費が必要となります。(出来るだけ安価な交通手段を考えます)

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