美しい音色の秘密
サヌカイトの硬度は7で水晶よりもやや硬いといわれています。
サヌカイトの美しい音色の秘密は、顕微鏡で見るとよくわかります。
同じ倍率で見た他の岩石と比べると、サヌカイトは大きい結晶(斑晶)がきわめて少なく、ほとんどガラス質や非常に細かい結晶の部分(石基)でできていて、
これはサヌカイトが特に急冷されて出来たことを物語っており、また、あまりに急冷されすぎて結晶として晶出できずに固まってしまったガラスの部分が多いのも、サヌカイトの特徴の1つで、たたくと金属音を発します。
針状の粒が一定方向に並んでおり全体が均質であるため、たたくと振動が打ち消し合うことなく均等に伝わり、美しい音を長く響かせるのだと考えられています。
サヌカイトは紀伊半島や九州北部でも産出しますが、音の良いのは香川県の金山、城山、国分台産だけです。
その美しい音色に魅せられてツトム.ヤマシタ等多くの演奏家に親しまれています。
サヌカイトは叩くと音域が広く、様々な高周波成分を含みます。
人間の耳に聞こえる周波数は高音を発したときの2万ヘルツが限界ですが、サヌカイトの場合100万ヘルツまで出す事が可能です。
サヌカイト石笛の場合叩くわけではないのですが、吹いてみると明らかに堆積岩とは異質な高音が出ます。
通常の石笛でも2万5千ヘルツほど出るので、サヌカイト石笛の場合更に高周波音が出ている可能性があります。
(参考
音の振動による、物質変化映像)
いまから1300万年前に,瀬戸内海沿岸に変わった組成の安山岩が噴火しました。
ふつう安山岩は,珪酸(SiO2,ガラスの大部分を占める成分でシリカともよばれる)が多く,酸化マグネシウム(Mg0)は少ないのですが,この地域の安山岩は珪酸も酸化マグネシウムも多いという特徴をもっており,このような安山岩を「高マグネシア安山岩」と呼んでいます。
高マグネシア安山岩マグマは,組成を変えずに地表に噴出することもありますが,マグネシウムは気化しやすいので減少し珪酸が増えます。
このマグマが噴火してできた岩石を「サヌカイト」と呼びます。
瀬戸内地域には,高マグネシア安山岩やサヌカイト,珪酸の量がもっと多いザクロ石をふくむ流紋岩などが分布していて,これらの岩石をひとまとめにして「瀬戸内火山岩」と呼ぶことがあります。
サヌカイトの破面
香川県産サヌカイトの平均組成
SiO2 |
二酸化ケイ素 |
62.60 |
TiO2 |
酸化チタン |
0.58 |
Al2O3 |
酸化アルミニウム |
17.45 |
Fe2O3 |
三酸化鉄 |
1.21 |
FeO |
酸化鉄 |
3.89 |
MnO |
酸化マンガン |
0.12 |
MgO |
酸化マグネシウム |
2.17 |
CaO |
酸化カルシウム |
4.57 |
Na2O |
酸化ナトリウム |
4.13 |
K2O |
酸化カリウム |
2.50 |
H2O+ |
|
0.30 |
H2O- |
|
0.17 |
CO2 |
二酸化炭素 |
n.d. |
P2O5 |
五酸化リン |
0.21 |
Total |
|
99.90 |
現在ではあまり使用されていませんが、赤の点線で示した部分が、瀬戸内火山帯と呼ばれている地域です。
2500万年前の日本、まだアジア
大陸にくっついている。 |
1500万年前、アジア大陸から分裂し、
日本海ができる。 |
1200万年前、東北日本は反時計回り、西日本は時計回りに回転しながら南下する。 |
400万年前、ほとんど現在の日本列島になる。 |
フィリピン海プレートは,いまから2000万年前にできたといわれており,その上に回転によって動いてきた西南日本がのしあがって沈み込みがはじまりました。1300万年前の瀬戸内火山活動は,このプレートの沈み込みによるものです。
しかし,マグマのできかたはふつうの沈み込み帯のものとずいぶんちがっていました。下の図はそのようすを示したものです。
プレート移動によって沈み込んだプレート(玄武岩)が堆積物である土砂を巻き込みマントルと反応すると、プレートが溶ける前に土砂が溶け始め、主成分であるSio2を多量に含んだ安山岩質マグマが出来る。
このマグマがマグネシウムの多いマントル層を通過して、瀬戸内火山帯の元となる高マグネシア安山岩マグマとなって地表に噴出する。
このように瀬戸内の島々の多くは、瀬戸内火山帯の造山作用によって形成されています。
サヌカイトはこの高マグネシアマグマが噴出した時に、ある適量の水で急冷された場合のみサヌカイトとなるそうです。(多すぎても少なすぎてもだめ)
赤色は山口県、愛媛県の高マグネシア安山岩及びサヌカイトの分布地域(手書きなのでだいたいのイメージです)